日本が誇る最高級車、トヨタ センチュリー(CENTURY)。その中でも2代目の「GZG50型」は、初代の伝統を引き継ぎながらも大幅な進化を遂げた一台です。富士山のように堂々たる存在感を示す水平基調で前後対称のフォルム、国産乗用車で唯一の5.0 V型12気筒エンジン、職人技を結集して作り込まれた贅沢なインテリア、他の車では味わえない静寂と乗り心地。公用車や社用車として長年愛されてきた理由には、車での移動を特別な瞬間に変える、おもてなしの心や目に見えない高いエマージェンシー性にも秘密があります。今回は「センチュリーGZG50」にピックアップして、歴史や誕生の背景、ショーファードリブンとしての設計思想、中古車相場についても解説。印象に残った1台「トヨタ センチュリーGZG50」その魅力に迫ります。

当該記事は、職業柄延べ18,000台以上の運転経験のある筆者(えーがた)が、印象に残った1台をピックアップして振り返って執筆しています。
トヨタ センチュリーGZG50はどんなクルマなのか

「トヨタ センチュリーGZG50」は、1997年に30年ぶりのフルモデルチェンジを敢行したトヨタのショーファードリブン。「GZG50」は国産乗用車系として、唯一の専用ユニットとなるV型12気筒を搭載する。御料車や内閣総理大臣専用車、政財界における公用車や社用車としても使用されており、洗練されたデザインと格別な静粛性、そして贅沢な装備と快適性が大きな魅力となっています。特に専用開発されたV12エンジンは「静けさの象徴」とも称され、乗る人すべてに最上級の移動時間を約束します。

ショーファードリブンとは後部座席の快適性を重視しており、主にお抱えの運転手などが運転することを想定しています。
トヨタ センチュリーの歴史と2代目誕生の背景

「トヨタ センチュリー」の歴史を遡ると1967年トヨタの開祖、豊田佐吉の生誕100周年を記念して登場した初代に始まります。2代目となる「センチュリーGZG50型」は、1997年に約30年ぶりとなるフルモデルチェンジで誕生しました。当時のトヨタは世界的な最上級車の基準を超えるべく、2代目となる「センチュリーGZG50」に新たな価値を追求。初代「センチュリー」の伝統を受け継ぎつつ、日本独自の「和」のモダンな高級感を重視し、徹底したクラフトマンシップによって仕立てられました。1997年にデビューすると、従来のセンチュリー以上に重厚な存在感を放つ「GZG50」は、国内最高峰のセダンとして確固たる地位を築きました。
ショーファードリブンとしての設計思想

「トヨタ センチュリーGZG50」は、日本の伝統ある最高級セダンとして1997年に登場しました。「センチュリーGZG50」は、日本を代表する「ショーファードリブン」(専属運転手付き)として、所有するオーナーが十分に満足できる設計思想が随所に盛り込まれています。高い静粛性と滑らかな走行性能、先進の5.0L V12エンジンによる余裕ある動力性能、後席での快適性を重視した機能や装備は、オーナーに至福の時間を提供します。エクステリア・インテリアともにいたずらに華美とせず上質、そして重厚な高級感を持ち、所有する喜びを追求した一台となっています。
装備バリエーションと新車価格

「トヨタ センチュリーGZG50」は、基本仕様から豪華装備で細かなオプション設定によって、顧客ごとの細やかな要望にも応えられるようになっていました。ウールファブリックのシートや電動リクライニングやマッサージ機能、プライバシーを守るためのカーテン、後席オーディオコントロール、デュアルEMV(エレクトロマルチビジョン)パッケージ装着車の設定など高級車らしい装備が満載です。コラム式とフロア式のオートマチックの2種のシフトポジションを用意されており、基本はフェンダーミラーですが、フロアシフト車はドアミラーも装着可能でした。新車価格は標準仕様車で約925万円から、フル装備仕様で1,200万円前後と、トヨタの市販車最高峰にふさわしいプライスタグとなっていました。
販売期間と年次改良
「トヨタ センチュリーGZG50」は1997年から2017年まで、約20年というロングライフで販売され続けました。この長い販売期間中には細かい年次改良が繰り返され、CO2排出量の少ないCNG(圧縮天然ガス)を燃料としたエンジンシステム搭載車(1,350万円)を追加。コラム式とフロア式ATの6速化でドライバーの意志と道路状況にあわせて、最適なシフトパターンを自動的に選ぶAI-SHIFTの採用。ディスチャージヘッドランプ(ロービーム)やLEDテールランプを標準設定し、安全性に配慮しています。
重要視される後席は、暖房時のシートヒーター機能に加えて、シート内で冷却された空気をシートクッションとシートバックに設置した通風口から送風するコンフォータブル・エアシートを採用。ルーフ中央部の二カ所に疲労感の軽減などに寄与するマイナスイオン発生装置を装着する。
このように快適装備の追加、安全性向上を目的とした仕様変更が随時行われています。ただし、根幹となる車体設計や5.0L V12エンジンには大きな変更は加えられていません。これにより、どの年式の「GZG50」を選んでもトヨタ・センチュリーらしい高い品質と伝統が守られているのが特徴です。
トヨタ センチュリー GZG50は印象に残った1台

「トヨタ センチュリーGZG50」は、トヨタのいや日本の乗用車の最高峰だと言うのが私の印象です。その最高峰にふさわしく、全長5mを超えるボディは富士山をモチーフとしており、その伝統のデザインはフェンダーミラーと共に和製セダンの象徴とも言うべきで、懐かしさも感じます。
重厚な黒塗りのドアを開けると、四角を基調としたインパネ周りには本木目があしらわれ、落ち着きながらも高級感漂う造りになっています。車内に入ると、クッション性の高いシートや分厚く毛足の長いフロアマットが印象的で、ハンドルには鳳凰のマークが輝きます。またスイッチ周りの表記が、日本語仕様なのも和製セダンであるセンチュリーの特徴です。
そしてキーを回すと、実に軽やかなセル音と共に5.0LのV12が動き始めます。しかし車内で聞こえるエンジン音や振動は皆無。アイドリングも500rpm程度で安定しています。走り出しもエンジンの存在自体を感じさせない静けさを持ち、低中速域では驚異の滑らかな走りを体感。
角張ったボディが特徴のセンチュリーは、見切りが良くフェンダーミラーも相まって大柄な割に運転しやすい印象。前後ダブルウィッシュボーン式のエアサスペンションはスカイフック理論を応用しており、路面の凹凸による入力があっても車をフラットに保ち、表現するなら空飛ぶ絨毯を連想させる上質な乗り心地。
5.0L V12の出力数値からも走行性能も期待しますが、走る・曲がる・止まると言った操作に対して急が伴う場合は、制御によってマイルドになっている印象があります。センチュリーと言う車の特性なのかも知れません。
「トヨタ センチュリーGZG50」は、御料車や内閣総理大臣専用車、政財界における公用車や社用車としても使用され、ショーファードリブンとしての立場を確立してきました。また、その車両として相応しい、唯一無二の5.0 V12をはじめ乗り心地などおもてなしの心やエマージェンシー性も追求してきました。
絶版車となった現在では、「センチュリーGZG50」の持つ唯一無二の魅力から、ドライバーズドリブンとしてハンドルを握って楽しむファンも獲得しています。ショーファードリブンとしての徹底したもてなしの心、トヨタの技術を結集して詰め込んだ驚異的な静粛性や乗り心地、和製セダンとしての堂々とした佇まいは、2代目「センチュリーGZG50」を印象に残る1台にしてくれました。

トヨタ センチュリーGZG50の中古車市場

「トヨタ センチュリーGZG50」は、トヨタが誇るフラッグシップセダンであり、5.0L V12エンジンを搭載した高級感あふれるモデルです。特に中古車市場では、その希少性と独特な存在感から注目を集めています。「GZG50型」は1997年から2017年まで生産されており、初期モデルでは比較的安価で手軽にV12を楽しめることから、ドライバーズカーとして自らハンドルを握るユーザーからも人気です。
現在の中古車価格相場
「トヨタ センチュリーGZG50」の中古車価格相場は、状態や年式、グレードによって幅広いのが特徴です。目安として、比較的走行距離の少ない個体や極上車は250万円~400万円台で取引されることが一般的です。一方で、走行距離が多めのものや内外装に経年劣化が見られる車両では100万円台から見つかることもあります。

やや古さが気になる「GZG50型」ですが、この車格や唯一無二のV12エンジンは魅力的です。状態の良い中古車も年々少なくなりますので、気になる方は要チェックです。
中古車選びのポイントと注意点

「トヨタ センチュリーGZG50」の中古車選びで重要なのは、年式・走行距離・修復歴や整備記録簿の有無、そして部品の交換履歴をしっかり確認することです。官公庁や企業で使用されていた車両が多く、メンテナンス頻度や程度も比較的良好だと言えますが、2オーナー・3オーナーという車も珍しくないので注意も必要です。
センチュリーは高級車として造りも堅牢ですが、中古車となると1台1台状態も違うので状態を確認しましょう。例えば、エンジンの掛かり具合、エアコンの効きや各スイッチ類の動作確認、エアサスや電装系など高級車特有の装備も多く、不具合が出ると修理費用が高くつく場合があります。可能であれば試乗させてもらいましょう。
また、修復歴があっても内容を確認すると軽微な場合もあります。価格だけで決めず、第三者機関の検査済みや保証付きの車両を選ぶなど、総合的な車両状態を見極めることが失敗しないポイントです。

センチュリーの価値を長く楽しむためには、信頼できる販売店で購入し、アフターサービスも任せられるのかも重要です。
デザインの特徴と高級感の秘密

2代目「トヨタ センチュリーGZG50」は、初代モデルを踏襲し富士山をモチーフにしたとされるデザイン、全長5mを超える威風堂々たる存在感を示す水平基調で前後対称のフォルム、フロントの精緻なグリルや職人の手彫りとされる鳳凰のエンブレム、最近では珍しくなったフェンダーミラーが特徴的で、上品さと風格が融合しています。前後バンパーやサイドには重厚感を持たせつつ、クロームパーツで高級感を演出。さらに日本語表記の「神威(かむい)」「摩周(ましゅう)」「瑞雲(ずいうん)」「鸞鳳(らんぽう)」「醍醐(だいご)」「精華(せいか)」などボディカラーも特徴です。細部まで和の美意識を散りばめ、迎車としての気品や格式を強く打ち出している点が他のトヨタ車と一線を画しています。
※ボディサイズ5270×1890×1475mm
エンジンスペックと静粛性の高さ

「トヨタ センチュリーGZG50」に搭載されるのは、国産市販車唯一の5.0L V型12気筒エンジン(1GZ-FE型)です。エンジンの組み立ては熟練工が1人で1機を組み立て、全数で抜き取り検査を行う。このV12エンジンは最高出力280馬力を発揮しながら、極めて滑らかで静かな動作が特徴。吸排気系やエンジン本体の振動・騒音対策も徹底され、停車時はもちろん走行中も車内は静寂そのものです。
また、基本構造は、信頼性の高い直列6気筒エンジンの「JZ」型をベースとしており、片バンクの6気筒にトラブルが生じても残りの6気筒が機能して走行できるよう、エマージェンシー性にも対応している。エンジン出力の高さと独自の静粛性技術によって、重厚な車体を容易に加速させる余裕の走りを可能にし、上質な静けさと安定した動力性能は、「センチュリー」オーナーを快適且つ確実に、目的地に送り届けることを約束します。ここに「センチュリー」という車の本質、信頼される理由があるのではないでしょうか。
内装・装備の贅沢さと快適性

「トヨタ センチュリーGZG50」のインテリアは、贅と職人技が結集した空間です。シートには上質なウールモケットや本革がふんだんに使われ、シートバックにはバイブレーターによって心地よい刺激が得られる、リフレッシング機能の採用や疲労感の軽減などに寄与する、マイナスイオン発生装置を装着するなど、まさに「動く応接室」と言える豪華仕様。本木目のウッドパネルや手作業で仕上げた装飾など、その細部に至るまで丁寧な仕上げが光ります。また、後席のセンターアームレスト内には、パワーシートやシート空調、エアコン、オーディオなどのコントロール機能を集約。快適な移動を追求した先進装備も標準搭載。静粛性とともに極上のプライベート空間を実現しています。
走行性能と乗り心地
「トヨタ センチュリーGZG50」は、重厚なラグジュアリーセダンでありながら、優れた走行性能と類いまれな乗り心地を誇ります。スカイフック理論を応用したエアサスペンションを採用し、路面の凹凸を極限まで吸収。静かで滑らかなV12エンジンと組み合わさることで、乗員を最上のくつろぎへと導きます。さらに、大柄なボディながらも細かなコントロール性の高さや、安定感のある直進性能も特徴です。運転手にとってもストレスの少ない操作性が得られ、長時間の移動でも疲れにくい設計となっています。
メンテナンス性や維持費について
GZG50型センチュリーはトヨタが誇る高耐久な設計と、きめ細やかなアフターサービスによって、長期間にわたり高い信頼性を維持しています。ただし、V12エンジン特有の複雑なメカニズムや豊富な装備を持つため、定期的な専門メンテナンスは不可欠です。パーツは純正供給が続いているものの、ごく一部の専用部品では手配に時間や費用がかかる場合も存在します。税金や燃費、消耗品の交換など維持費は高級車らしくやや高めですが、それに見合う圧倒的な存在感と快適性が得られる、トヨタ渾身のフラッグシップモデルです。
オーナーの声と評価・口コミ
トヨタの最高級セダン「センチュリー」は、その独自の魅力と圧倒的な存在感から、多くのオーナーや自動車愛好家の間で高い評価を集めています。特に「GZG50型」のセンチュリーは、5.0L V12エンジンを搭載した最初で最後のモデルとして、希少性や乗り心地の良さが話題となっています。
「センチュリーGZG50」を所有する方々の多くは、5.0L・V12エンジンならではの滑らかで静かな走りを高く評価しています。「さすがトヨタのフラッグシップ」といった声や、長距離運転でも疲れにくい快適な乗り心地に驚きの感想が寄せられています。一方、「燃費は決して良くないが、それでも価値がある」「他の車では味わえない重厚感がある」といった意見もあり、センチュリー特有の上質な雰囲気に惹かれる声が目立っています。
また、メンテナンス面では「V12は複雑だが意外と丈夫」といったトヨタらしい信頼性への評価も見受けられます。こうした口コミから、「センチュリーGZG50」は単なる高級車ではなく、オーナーの誇りや満足度の高さを感じさせる一台だと言えるでしょう。
まとめ
「トヨタ センチュリーGZG50」は、トヨタの伝統と革新の結晶として誕生した国産高級車の頂点です。圧倒的な静粛性を誇る5.0L V12エンジンは、ショーファードリブンとして格別の乗り心地と確実に目的地に送り届けることを約束し、最高峰の「おもてなし」精神が細部にまで注がれています。経年を経ても色褪せない内外装の上質さや、各世代のセンチュリーと比べた際の「V12」エンジンなどの独自性も「GZG50」ならではの魅力です。中古車市場でも比較的手軽な相場から、オーナードライバーとして自らハンドルを握って楽しむなど注目されています。近年では、公用車・社用車として、脱センチュリーの動きも見られますが、国産最高級車の哲学を象徴する「センチュリーGZG50」唯一無二の存在感は、オーナーのライフスタイルや価値観までも豊かにしてくれるに違いありません。